
遺伝性乳癌卵巣癌症候群について
(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome:HBOC)
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)とは?
乳がんの中で7〜10%の人は遺伝が原因と言われています。そのうち最も可能性が高い遺伝子はBRCA1またはBRCA2という遺伝子で、どちらかに生まれつきの異常(変異)があることで、乳がんや卵巣がんなどにかかりやすくなる遺伝性の病気です。これらは、本来、DNAの修復を助ける「がん抑制遺伝子」ですが、変異があるとうまく機能せず、がんが発生しやすくなります。
両親のどちらかがBRCA1またはBRCA2の遺伝子変異を持っていると、1/2の確率で受け継がれます。ただし、遺伝子変異を持っていても全てががんを発症するわけではありません。特に、男性が持っていても乳がんを発症することは少ないですが、そのお子さんが女性だと、受け継いで、発症することはあります。

乳がんや卵巣がんを発症するリスク
HBOCの主な特徴
-
若年で乳がんを発症(40歳未満)しやすい
-
両側性乳癌や複数の乳がんを発症しやすい
-
乳がんと卵巣がんの両方を発症しやすい
-
トリプルネガティブ乳がんが多い
-
男性で乳がんを発症しやすい
-
家系内に乳がん、卵巣がん、前立腺がんや膵臓がんになった人がいる

検査について
採血で遺伝子検査ができます。
BRCA1やBRCA2の変異を血液検査で調べることができます。
●以下の方は保険が適応されます。(3割負担で約6万円、1割負担で約2万円程度)
-
45歳以下の発症
-
60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
-
2個以上の原発乳がん発症
-
第3度近親者内に乳がん、卵巣がんまたは膵臓がん発症者がいる
-
男性乳がん
-
近親者にBRCA1/2遺伝子変異がある
●なお乳がんと診断されていなくても、次の方は保険適用となります。
-
卵巣がん、卵管がんあるいは腹膜がんのいずれかを発症
●その他の方は自費検査にはなりますが、調べることは可能です。
遺伝子変異があった方の対策について
遺伝子検査の結果、変異がなければ通常通りの検診を受けましょう。
変異があった場合、
1. 遺伝カウンセリング
専門のカウンセラーによる遺伝カウンセリングをお勧めします。
正確な医療情報の提供、心理的サポートをしてもらいます。また遺伝子変異は自分だけのことではなく、家族にも関わってくるので血縁者への情報提供の必要性と方法の相談に乗っていただきます。
2. サーベイランス(定期検診)
-
年1回の造影MRIやマンモグラフィ検査は必ず受けましょう。
-
卵巣がんの早期発見は困難なため、婦人科で定期検査をお勧めします。
3.予防的手術(リスク低減手術)
乳がんや卵巣がんを発症するリスクを下げるために、がんになる前に予防的に乳房切除、卵巣・卵管摘出などを行うができます。リスクを大幅に下げることができますが、治療の選択や時期についてはよく担当医と相談することが大事です。
遺伝子検査は、簡単な血液検査で自分が将来、他の人より乳がんや卵巣がんになりやすい リスクがあるかをわかることができる検査です。
もし、変異があると分かったら、がんになる前に対策をとることも可能になってきました。
ただ、遺伝子検査は自分だけの問題ではなく、身近な血縁家族にも影響があります。検査をする前に、十分に考えておく必要があります。
一方で、検査にも限界があります。BRCA1やBRCA2の変異が現時点では、がんの発症と結びつくかはっきりしていないという意義不明で出る場合、今回調べていないBRCA1やBRCA2以外の遺伝子が関わっている場合、などがあります。ですので、変異がなかった場合でも、通常通りの検診は継続することが重要です。
当院でのBRCA1/BRCA2遺伝子検査について
遺伝子検査にご興味がある方は、外来予約をお取りください。
検査内容、リスク、検査後流れ、ご家族への対応などについて、詳しくご説明させていただきます。
検査については、連携医療機関で行なっておりますので、ご案内いたします。
